イブキ

移動できる子ども型アンドロイド


ibuki は移動できるアンドロイドとして,以下の3 つの特徴を持ちます.人と共に行動し,対話を行うことで,より親密な関係を築くアンドロイドの実現を目指します.そのために,移動機能を持つ新たなアンドロイドのハードウェアを開発しました.この機能により,人と同じ経験を共有でき,人とより深い関係を築く対話ロボットが実現できる可能性があります.今回開発した移動できる子供型アンドロイド「ibuki(イブキ)」には,移動のための機構として実用性と安定性の観点から車輪を採用しました.

[移動時の身体の動き] 人間の歩行時の身体の動き,特に重心の動きの特徴に着目し,車輪移動でありながら,人間らしく動く機構を開発しました.人間の重心は歩行時に前額面上で8 の字を描くことが知られており,ibuki はこの軌跡を,偏心した車輪と上下の直動機構により実現します(特許申請中).動作を調整することで,並んで歩く人の動きに合わせたり,「楽しそうに歩く」のような身体全体を使った感情表現をしたりすることが可能です.

[小型化・軽量化] 大人サイズのロボットが移動すると,転倒や衝突などにより人にけがをさせる危険性が高まるだけでなく,心理的な威圧感も増します.そのため,開発したアンドロイドは身長120cm の子どもサイズとしました.また,繊維強化樹脂や炭素繊維部品を用いることで軽量化し,安全性を高めました(上半身の重量:8 kg).駆動装置には,コンプレッサが必要な空気圧ではなく,バッテリーによる駆動が可能な電気モータを採用しました.電流センサを用いたトルク制御を行う基板を開発し,関節を駆動しています.

[多彩な身体表現] ibuki は子供サイズでありながら,全身に合計47 自由度を持ちます.頭部に15自由度,片腕に6 自由度,片手に5 自由度,さらに首と腰に3 自由度ずつを持っており,表情のみならずジェスチャやハンドサインなど多彩な表現が可能な構造となっています.

今後は,ERICA とCommU を用いた研究を通じて培った対話技術をibuki にも適用し,移動機構や腕・手を用いた人とのインタラクションを通じ,経験の共有,さらには,それに基づく価値観の共有によって,人とより深い関係を築くことが可能なアンドロイドを実現して行きます.